さくら色 〜好きです、先輩〜
「焦らなくてもいいんじゃない?ゆっくり見つけていけばいいんだよ」
「先輩は高校卒業したらどうするんですか?」
「一応いくつか話もらってるんだ。プロからも大学からも。でもまだ悩んでる。今はそれより選手権にいっぱいいっぱいでさ」
先輩はそう言って苦笑いを浮かべた。
やっぱりたくさんスカウトされてるんだ…
きっと明日優勝したらもっと凄いことになるんだろうな。
「決勝戦、緊張しますか?」
「ああ。考えるだけで手が震える。夢に見た舞台だからな…二年前はこんな風になるとは思ってなかった」
先輩は手のひらをジッと見つめている。
その手は小刻みに震え、想像以上の緊張が伝わってきた。
「夏樹さんはやっぱり戦い方を変える気はないんでしょうか…?」
「…夏樹と俺は同じ夢を持ってた。サッカーに対する想いも情熱も俺と似てた。俺は最後まであいつの夢と情熱を信じたい」
先輩は真っ直ぐ前を見据え、その視線の先にはきっとまだ夢を語り合っていた夏樹さんの笑ってる姿があるんだと思う。