時は今



「そのお兄ちゃん、お兄ちゃんってのもさ…。あんたね、同級生とか他にも男ってのはいるだろう。世の中には」

「お兄ちゃんが好きで何がいけないの?だいたいお兄ちゃん以上にいい男がいないのは美歌のせいじゃないもん!」

 ここまで言い切られるとすごいとしか言い様がない。そこまで言わせている四季といい、言い切る美歌といいという感じである。

「──美歌ちゃんって…」

「なぁに?」

「ううん。本当に四季のこと好きなんだなって思って…」

 由貴が真面目にそう言うと、美歌は少しはにかんだように睫毛を伏せた。

「…うん。いいの、別に。わかってるの。でも美歌はお兄ちゃん好きだから今はこれでいいの」

 早瀬はその件に関しては半ばあきらめ気味なのか、何も言わなかった。

「由貴、雨降ってるから車出させるよ。四季を送ってもらって由貴に風邪ひかせたんじゃ、あたしが隆史に恨まれるわ」

「あ…いえ、大丈夫です」

「こんな時は遠慮するもんじゃないよ。いいから送られなって」

「…ありがとうございます」

「よし」

 早瀬は姉御肌というのか手際良く物事を片づけてゆく立ち回りが見ていて気持ちの良い人物だ。

「四季もねぇ、美歌の半分くらいは頑丈だったら良かったのに、何処で遺伝子偏っちまったんだか…」

「そんな言い方、美歌とお兄ちゃんが全然似てないみたいじゃない!」

「何処が似てんの?」

「美貌が!」

「あー…はいはい」

 美歌と早瀬の掛け合いはいつも賑やかだ。笑ってしまう由貴に早瀬が「じゃ、行くよ」と手で合図を送った。



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