時は今



 そこに、コン、とノックの音がして、部屋のドアを開けた早瀬が「あれま」と声を発する。

「いい年頃の兄妹が何やってんのかね。四季、お前もたまにはこいつ突き放さないと、このブラコンいつまで経っても治らないぞ」

「お兄ちゃんは悪くないもん。それにほんとに仲いいだけだもん」

「あー美歌はそんな暇あるんなら夕飯の用意をする。あたしと祈は今日は店が忙しいから」

「お母さんたちは?食べないの?」

「あたしらの心配はいいよ。いつ食べられるかわからんし。作っていてもらえるならありがたいけどね」

「はーい」

 美歌は素直に返事をする。四季が「僕も作るよ」とブランケットをたたみながら立ち上がった。

 喜んだのは美歌である。

「ほんとに?お兄ちゃん何食べたい?」

「あー…もう勝手にやってろ。四季、無理して美歌に喰われんなよ」

「大丈夫だよ」

「ほんとかね」

 早瀬はつき合ってられないと言うように出て行ってしまった。

「もう、お母さん心配しすぎ」

「わからなくもないけどね…。美歌は好きな人はいないの?」

「お兄ちゃんに決まってるじゃない」

「そうなんだ」

「お兄ちゃんは?」

 四季は曖昧な微笑みを浮かべると「好きになりそうな人はいるけどね」と答えた。

 美歌はその言い方に複雑そうな表情になる。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫って何が?」

「──。お兄ちゃん傷つけるような女なら美歌が許さないから」

 そう言った美歌の言葉にはいろいろな想いが凝縮されているようで、四季はしばしして美歌の手を握った。

「大丈夫。美歌を傷つけるような男がいたら僕も許さないから。…ありがとう、美歌」

 握ってくれた四季の手があたたかくて、美歌の頬には涙がこぼれていた。

「──うん。ありがとう、お兄ちゃん」



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