時は今
美歌に夕飯を頼んだ早瀬だが、実は美歌は細かいことが苦手である。
ピアノを弾く四季を見て自分も習い始めたのはいいが、右手と左手が別々の動きをするとか、理解不能な指使いやらで、習い始めてから1年も経たないうちにやめてしまった。
そういうわけで次に習い始めたのが空手とバレエだが、美歌の性格には空手の方が合っているようである。
対して四季は幼少の頃から音に敏感で、性格も細やかなところがある。
同じように包丁を持たせても、こんなに作るものに差が出るかね、と早瀬には言われてしまった。
「お兄ちゃん、美歌、炒飯作りたい」
美歌は炒飯が得意である。中華鍋を片手で振ってざっと炒めている厨房の板前に、「かっこいい」と言って炒め方を教えてもらい、軽くマスターしてしまった。
ただし、それは材料が切られていればの話だが。
その点四季は包丁を持たせても細かい作業が得意なのである。
「じゃあ僕が切るから、美歌作ってもらえる?」
「うん。美歌その間スープ作ってるね」
手際の良さは母親譲りだろうか?美歌は冷凍していたご飯を解凍しはじめ、スープの鍋を火にかける。
四季が切り終わる頃にはスープは半分出来あがっていた。
「そういえば由貴お兄ちゃんに会ったよ」
「ああ…僕、由貴がピアノ弾いている途中で眠っちゃったんだよね。悪いことしたな」
「由貴お兄ちゃんは、お兄ちゃんのこと心配してたけど」
「うん。…由貴、本当にいい子だよね」