時は今



 隆史は「四季くんもねぇ」と呟いた。

「他の教科はよく出来るのに、よりによって何で僕の教科だけ出来ないかなぁ」

 由貴は苦笑した。

「四季、本当に数学だけ苦手みたいだよ。俺から見たら四季の方が不思議なんだけどね。楽譜の七連符とか九連符とか正確に叩き出す感覚持ってるのに、何で数式になるとわからなくなるの?って」

「感性の子なんだろうね」

「四季の方が教えがいあるんじゃないの?」

「うん。四季くんは可愛いね」

 隆史も四季に聞かれることがまんざらでもない様子である。

「そういえば四季くん、午後は体調良くなかったみたいだけど」

「少し熱はあった。きちんと食べて睡眠をとったら大丈夫だと思う。美歌ちゃんに任せてきた」

「そうか」

 四季はまだ体調が不安定なのか時々不調を訴えたりする。

 元々身体が丈夫ではないことを考えたら、退院後の経過としては快方に向かっているのかもしれないが。

「由貴くんくらいに身体が強くなるといいよね、四季くんも」

「四季、別の意味で身体は強いと思うんだけど…。身体が疲れやすいというのと意味が違うのかな」

「え?強いって?」

「力とか?ピアノすごい弾き方するから気になって、四季に腕相撲しない?って言ってみたら、強かった」

「嘘」

「本当。手を痛めるからあまりこんなことはしないんだけどって言ってたけど」

 親父も四季としてみたら?と言われ、隆史は唸った。

「これで負けたら面目立たないねぇ」

「そう?四季、たぶん普通に強い方だと思う」

「そういう問題じゃないんですよ」

「そうなの」

 ──いろいろあるようである。



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