時は今
四季は智の健康的にピンと伸びた背筋を見て、出会えて良かった人だと思う。
「吉野さん、いいね。話していると元気になる」
「そうか?たくさん元気になるといいぜ」
「吉野さんは好きな人っていないの?」
「あー恋愛ねー。私、恋愛苦手なのよ。ガラじゃないっていうか」
一度恋愛でコケてっからどうもね、と苦笑した。
「ま、恋愛なんてしたいと思って出来るもんでもないし」
「それもそうだね」
四季と智は教室までの道を戻り始める。
──と、校舎の上から声が降ってきた。
「あ、四季くんと吉野さんだ。由貴くん見なかった?」
クラス担任の綾川隆史である。智は「知りません」と即答する。
「学校でもそんなに自分の子に用があんの?先生さーもっと子離れした方がいいと思う」
「吉野さんひどい。そんな僕がいつも由貴くんを構っているみたいな言い方」
「だってそうじゃん」
智の言いっぷりに四季は「しっかり者の吉野さんにかかったら、先生も形無しだね」と言った。
「やー…だってうちの親、あんなに子供に構わねーもん」
「隆史おじさん、由貴のお母さんとの交際を反対されて家を出て行ってるから。それで由貴が綾川の家で気を遣わないといけなくなってるのが不憫だというか…由貴に負い目を感じているのかも。由貴のお母さんは、由貴が小学校の時に亡くなったっていうのもあるし」
「──。そうなんだ」
智は四季の話に少し納得したように言った。
「いろいろあるんだな。先生も」