時は今
ホームルームが終わったのか生徒たちが下校しはじめた。校門前で待っていた美歌は顔をあげる。
そろそろ大丈夫だろうか?
「うわ、やべぇ」
「何?」
中学の制服姿の美歌をちらちら見ながら男子生徒が通り過ぎて行く。美歌が目立つのである。
お兄ちゃんと並んでもひけをとらないくらいの美貌とやらで。
無論そんな男子生徒のことは目に入っていない美歌は、下校する生徒とは逆方向に歩き始めた。
校舎に入ってみたはいいものの、また迷う。…教室がわからないのである。
「──何?」
ふと無愛想な声がかけられた。美歌を見ても「何だ、この中学生」とでもいうような目付きのメガネ男子。
誰に声をかけていいのかわからなかった美歌は、丁度良かったと思い、訊いた。
「お兄ちゃんの教室がわからないの。進学科の2年A組って何処ですか?」
「進学科ならこの建物じゃない。──こっち」
言ってすたすた歩き出した。案内してくれるらしい。無愛想だがいい人そうだ。
美歌はその男子の後を追って歩き出した。
教室まで案内してくれた男子は2年A組まで来ると、そこにいる生徒に聞く。
「──ちょっといい?この子の知り合いいる?」
まだ半分は教室に残っていた生徒がざわめく。
「やべぇ、可愛い」
「誰?」
「──美歌?」
奥の窓際から声がした。
「お兄ちゃん!」
美歌が笑顔になる。四季は席を立つと歩いて来た。
「どうしたの?──ごめん、舘野くん」
「音楽科の校舎で迷ってた。妹?」
「うん。ありがとう」
美歌もその男子にぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございました」
「いや、いい。…じゃ」
くるりと背を向けると行ってしまった。
「…無口なのね。誰?」
「舘野馨。音楽科の2年。声楽やってる。いい声してるよ」
「──歌うんだ」
意外だった。
「それより美歌、どうしてここにいるの?」
「伯父さまが担任なんでしょう?会えると思って。過去の入試問題、伯父さまがあげられるからって」