時は今



「そう。じゃあ一緒に帰ろう。準備するから待ってて」

「うん」

 四季が席に戻ろうとしたところで、恭介が凍結したように見ていることに気づく。

「黒木くん?」

 四季がひらひらと恭介の前で手を振る。

「大丈夫?」

「四季」

「はい」

「お前、何?あれ、妹?」

「そうだよ」

「ちきしょー!!ぜってー卑怯!!神様ってヤツは、与えるとこにゃ二物も三物も妹も与えてる!!」

 俺の妹はあんなに可愛くねぇ!!と恭介が叫ぶ。

 四季と美歌が並んでいる構図の美しさに放心状態になっていた外野もそれでようやく言葉を発し始める。

「さすが四季っつーか何つーか…」

「桜沢涼と並べられるレベル」

 四季はにっこりした。

「うっかり妹に手を出したら怒るからね」

 四季の言葉を無視して何人かの男子が美歌に話しかける。

「美歌ちゃんて言うの?何か怖いねーお兄ちゃん。お兄ちゃんなんかほっといて、今度俺らと遊びに行かない?」

 美歌は完全防御の最上級の笑顔を向けた。

「美歌、お兄ちゃんが好きなの。お兄ちゃんのこと悪く言わないで」

 語尾にハートマークがついているような甘さで、こんな凶悪な響きの言葉も稀だろう。

 美歌の言葉には明らかに「お兄ちゃんを傷つける人は美歌が許さない」成分が入っていた。

 ──四季が言い足した。

「怒るのは僕じゃないよ。美歌、空手強いから覚悟して」

「あはははは。四季、冗談だろー」

「本当だよ。だからうっかり手を出すとって先に言ってるよね?」

 なるほど、そういうわけだったのか。笑っていた男子たちは若干引きつる。

 美しいものには棘があるらしい。──寒い。



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