時は今
「何で俺がこんな雑用やってんのか意味わからないし」
「由貴くん、ごめん。何処に置いたかわからなくなっちゃったんだもん」
ぶつぶつ言い合うふたりの声が教室に入って来た。美歌がそのふたりを見てパッと明るい表情になる。
「伯父さま!由貴お兄ちゃん!」
「美歌ちゃん!?」
「おや。愛しの姫君が来てますねぇ」
由貴のこともそうだが、隆史は四季と美歌のこともかわいがる。美歌は「伯父さま、素敵」と背広を来た隆史を褒めた。
「伯父さま」の科白が出た時点で四季と由貴を除くA組男子には「もうわからない世界」である。
「四季、お前らの家系ってどんな家系なん?伯父さまって」
「家系って…。別に僕は『隆史おじさん』って普通に言ってるよ」
「ああ、そういえば四季はそう言ってるな」
「祖父なら、僕も美歌も由貴も『お祖父様』って言ってるけど」
「──」
さすがの黒木恭介も沈黙してしまった。
「美歌ちゃん、これ、過去の入試問題」
由貴は美歌に、集めてきた入試問題を渡した。
「わぁ、由貴お兄ちゃんありがとう」
「他の教科のは担当の先生に言ってすぐにもらえたんだけど、この伯父さまの教科のだけ何処に行ったのかわからなくなってて」
「だって僕がここに赴任してきたのって去年からだし」
「それはわかるけど生徒の俺に入試問題の保管場所なんてわかるわけないだろう」
「でも結局由貴くんが見つけられたじゃない。──他の先生忙しそうだったんだよ」
どうやら由貴に探してもらうのを手伝ってもらっていたらしい。
その様子を見ていたA組男子が「由貴だけ見てたら普通の家庭の育ちっぽく見えるんだけどな」とぼやく。
四季は頷いた。
「うん。由貴はお母さんが早くに他界してるから家事も一人でこなしてるし、普通というか、だいぶしっかりしてると思う」
「え?由貴ってそうなの?それであの成績?」