時は今
由貴は常に試験ではトップを争う順位にいる。恋人である桜沢涼もそうであるため、端から見ると「完璧過ぎてよくわからないカップル」に見えるらしい。
「つき合っているのが涼ちゃんだから、涼ちゃんのわからない問題は由貴が教えたり、由貴がわからない問題は涼ちゃんが教えてくれたりするって言ってたよ。あのふたりが一緒にいるから、あの成績だという気もする」
「うわー…それはそれですごい世界」
男子たちが話していると涼が教室に戻ってきた。
「会長」
細くて澄んだ声が由貴を呼ぶ。
由貴のすぐ側まで来ると自然に美歌と涼が並ぶ形になった。
「どなた?」
涼が由貴に問うと、由貴は「従妹だよ」と答える。
「四季の妹」
合点がいったように、小さな顔にはにかんだ微笑みが浮かんだ。
「桜沢涼です」
「涼ちゃんは由貴くんの彼女なんだよ」
隆史が横からつけ加える。
「桜沢涼…」
美歌が信じられないという表情になり「本当に?」と瞬きする。
「美歌、ハルモニ・オン・ザ・ヒルのお洋服好き」
知っていたらしい。涼が「ありがとう」と言葉にする。美歌の方から涼の手をとると握手をした。
「綾川美歌です。今度、お茶にお誘いしても?」
下心のある男子より、桜沢涼の魅力の方が美歌の中では勝ってしまったようである。
四季が「ね?」と予想していたように言った。
「本当に可愛い女の子を落とすのは生半可な気持ちでは無理なんだよ」