時は今



 四季は「今日は美歌が来ているから、すぐ家に帰るよ」と由貴に伝えた。

 四季なりの気遣いではある。

 本当は連弾についての話もしたかったが、連日由貴をつき合わせていると、由貴と涼が一緒にいられる時間を奪ってしまう気がしたので。

 涼が控えめに由貴の手に自分の手を絡めた。

「会長、一緒に帰ろう」

「──うん」

 普段冷静な由貴にこんな甘やかな表情をさせるのは桜沢涼だけである。

 何か不安になったのか、隆史が「由貴くん、門限は」と言う。

「20時。大丈夫だよ。俺、いい子だし」

「それは由貴くんはいい子には違いないんですが」

「心配しなくても、俺、親父のことも大事に思ってるよ」

 一撃で隆史の心は撃墜である。

 四季が興味深そうに呟いた。

「…由貴って何気にキラー系の素養があるよね」

 由貴が複雑そうな顔をした。

「そんなのあっても嬉しくないんだけど」



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