時は今



 風の音が聴こえるか。

 私の声が聴こえるか。

 私を感じる私は誰だ。

 輝けよ、私を映す君。





 のびやかな声が歌った。




(私を映す者がいる)

 雛子は忍と四季に己の感情を映し見る。

 反射率の高い透明な心は雛子にはわかる。嫉妬をぶつけても何の意味もない。

 だからこそ、魅せられる。

 私ではないものに映る私。

 あなたは何。

 私はその輝きを手に入れたい。





 雛子の声は恐れを知らない光のようだ。忍は天上から降りそそぐ陽光でも見るように雛子の歌声を聴く。

 コーラスをしている生徒は雛子の歌にのまれているようだった。

 揺葉忍と同じ曲を歌えと言われたら普通の者はたじろぐのだ。そう、普通の者なら。

 だが、雛子にはそれがまったくない。

 赤子がまだ未知なるものに手を伸ばそうとするように、心の赴くままに手を伸ばす。



 ここにいる。

 私はここにいる。



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