時は今



 四季はしばらく考えていたが、口を開いた。

「もし、忍が桜沢の家にいづらくなるようなことがあったら、うちに来たらいいよ」

「え?」

「お祖父様に聞いてみる」

「──」

 忍は驚いて四季の顔を見つめている。

「…四季」

「僕にはそれくらいしか出来ないし」

「それくらいって」

「だって僕とつき合ったせいで忍が家にいづらくなりましたって、責任感じるよ」

「でもそれって、プロポーズか何かの言葉みたいじゃない?」

 言われて、四季は困ったように赤くなる。

「それなら、他にどうすればいいの」

 忍は可笑しくなって笑ってしまった。笑って、涙が出てきてしまう。

「ごめん。嬉しい。ありがとう。でも四季」

「ひどい。心配してるのに」

「ふふ。…ほんとに、ありがとう」

 忍は指先で涙をおさえると「バイトしようかな」と呟いた。

「ずっとこうして誰かに守られてばかりいることは出来ないし。親はいないし」

「──。忍、ひとりで頑張り過ぎることないんじゃないの?」

「うん。そうなんだけど」

「──。…桜沢静和が忍を守りたかった理由って何となくわかる気がする」

「え?」

「とりあえず忍は幸せになった方がいいと思う」

「幸せ…。私には難しいけど」

 忍には何が幸せなのかわからなくなるのはよくあることだ。死んでしまった方が楽になるのではないかと思ったことも何度もある。

 四季が手を繋いできた。

「──あまり投げ遣りにならないで。僕は忍が好きだから」

「私、投げ遣りに見える?」

「時々、いつ死んでもいいような目になってる時ある」

「…そう。気をつける」

 四季の手のぬくもりが、何となく自分を正気でいさせてくれるもののようにも思える。

 忍は静かに言った。

「自分を愛せないのかもしれない。どう愛していいのかもわからないんだけど」

「……」

「──でも私を好きになってくれて、ありがとう。四季」



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