時は今
まっさらな空が綺麗だった。土曜日。今日もお休み。明日もお休み。
(何しよう)
床拭きも窓拭きも終わって洗濯物も干して。
忍は白いワイシャツをふわりと羽織ると、外に出た。
いい天気。
定期演奏会の練習に縛られていたせいか、ひとりになるのは久しぶりの気分だった。
忍のそばを小学生くらいの子供たちが駆けていく。
(楽しそう)
自分はあれくらいの頃、どうしていただろう。あまり覚えていない。
歌はうたっていた気がする。
『揺葉さん、声きれいね』
そうだ。音楽の先生は好きだった。歌をたくさん教えてくれた。
でも同級生の子は自分が歌うのを冷たい目で見ていた。
『先生、忍ちゃんばっかりほめる』
あまり笑わなくなった。自分が笑っていると同級生の子はいい気分はしないのかもしれないと思って笑えなくなった。
家に帰っても大抵誰もいなかった。遅くまで母親が帰らない時は適当にあるものを食べていた。たまに母親が家にいても鬱陶しがった。
『歌なんか歌わないでよ』
家で歌うこともしなくなった。先生がいる時の音楽室か外で誰もいないところでしか歌わなくなった。
周りの同級生の子たちの会話にもついて行けなかった。
うわー汚ねぇ近寄るとうつるぜ、せんせーいほうきでケンカしてるー、わたしあいつ超きらーい。
子供たちの感情は露骨でその露骨さ故の残酷さが忍にはひどく痛いものに見えていた。
忍はひどくいじめられるような経験はなかったが、何処か他の子たちに馴染めない違和感は常にあった。
自分がそうだからなのか周りの子と仲良くしている子供たちを見ていると、良かった、と思う。
忍は歌を口ずさみながら、ふと思い立って、ある場所へ行ってみることにした。