時は今



 輝谷音大附属高校に通っていた四季に、忍の言っている小学校はどこのことなのかすぐわかった。

(そういえばバスに乗るの久しぶり)

 四季も忍とは違う思いで懐かしさを感じながら、乗っていたバスから降りた。





 校内に入るとピアノの音と歌が聴こえてきたため、四季はその音をたよりに音楽室を探し当てた。

 音楽室の戸を開けるとピアノの音と歌が途切れ、グランドピアノの前に座っていた忍が振り返った。笑顔だ。

「あ、来た」

「来たじゃないよ」

 四季は言いながらも、来る途中で買って来た飲み物を忍に渡す。

「わ。ありがとう」

「僕、さっき起きたから、ご飯食べてないんだよね」

「もしかして眠ってた?」

「うん。そろそろ起きようかなって思ってたら電話がかかってきた」

「おにぎり食べる?差し支えなければ」

「差し支えって…。おにぎりがあるの?」

「うん。作ってきた。何か食べたらダメなものなかった?」

「ああ…。生もののこと?火が通っていない食べ物は控えるように言われてはいる。もうしばらくの間だと思うけど」

「ふーん…。早く食べられるようになるといいね。はい」

 忍からおにぎりを手渡された。ちょっと嬉しい状況である。

 ふたりで窓際に椅子を並べて座った。

「何でこんなところにいるの?」

「何となく。散歩していたら急に小学校に行ってみたくなって。歩いて来ちゃった」

「歩いて?結構距離あるよ」

「うん。四季がキツいなら帰りはバスで帰ろう」

「歩くのだけなら差し支えないけど…。どれくらい歩いたの?」

「1時間半」

「すごい」



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