時は今



 帰りは海沿いの道をふたりで歩いた。──バスに乗ってしまうと一緒にいられる時間が短くなってしまう気がしたので。

 秋のせいか日差しが柔らかい。散歩をするにはいい時期だ。

 砂浜に降りられそうな階段を見つけて降りて行き、砂浜に絵を描いた。





 四季、何描いてるの。

 ──楽譜。

 そんなところに楽譜なんか描いたら、四季の音、海にさらわれない?

 海は自然に還って行くだけだよ。何もさらえないよ。忍がさらわれなければいい。

 さらわれたら?

 取り戻しに行く。忍は僕の音楽だから。





 話す言葉が即興曲のように潮騒に溶けて行った。

 しばらくそうして過ごして、「何か食べよう」と砂浜からあがって来た。





「──あれ」

 クラスメイトとクレープを食べていた、羽鳥まどかが道を挟んで向こうに立っている、ふたりに目をとめた。

「…四季くんだ」

 まどかの呟きに一斉に複数の女子が反応する。

「ええ!?嘘、どこ!?」

「ほら、道の向こうに立ってる」

「えー!誰?一緒にいるの!?彼女!?」

「元カノじゃなくない?あんな大人っぽい子じゃないもん」

「自然消滅みたいな話聞いたけどー」

「ていうより、元カノは四季くんにはあまり合わないと思う」

 見るなり、女子は言いたい放題である。2年の時四季のクラスメイトだったまどかは、四季のことがちょっと好きだった。彼女がいるのでアピールはしなかったが。

「四季くん、元気になったんだね」

 とりあえずまどかはそれが嬉しかった。

 騒いでいる女子の中でひとり無言でいた園田沙也が「一緒にいるの揺葉忍じゃない?」と言った。

「すごく歌が上手いよ。ヴァイオリン弾いてるのも見たことある。私たちより一期上だったと思うけど」

 四季が忍の手をひいて道を渡って来た。

「わー…美人」

「いい雰囲気だね」

 見とれるくらいに絵になっている。

「話しかけてみようか?」

「彼女と一緒なのに。よしなよー。今度聞けばいいじゃん。まどか、四季くんのアドレスわかるよね?」

「…うん。一応」

「元カノの子どうなったのかなぁ」

「元カノも転校したんだよね」

「嘘ー。何があったんだろ」



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