時は今



 園田沙也たちから離れて後、四季の表情が何か──引っかかることでもあるように、わずかに曇った。

「──四季?」

「…ああ、うん」

「どうかした?」

「……。気にしないで」

 そう言われると忍は気になってしまう。カウンターで注文したものを受け取って、あまり人のいない壁際のテーブルを選ぶ。

 席についてから、忍が「さっき、何か気になることがあったの?」と聞いた。

 四季は少し考えてから、言葉にする。

「──何も言わずに、アドレスと携帯番号を変えるのって、どういう時?」

「相手がどれくらい親しいかにもよるけど…。親しい人?」

「つきあっていた子」

 四季の表情は静穏だった。というより、静穏を保っていなければ他にどういう表情でいればいいのかわからないような感情が眠っているのが見てとれた。

「それはどれくらい前から?」

「わからない。…無菌室にいた時は携帯なんてさわれなかったから」

「四季の代わりに連絡とれるような人、いなかったの」

「──由貴、キレてて」

 忍は息をのむ。

「そこまで四季が彼女に優しくする必要あるのかって。好きな人が倒れてたら普通来るだろうって」

 四季はそこで一旦言葉を区切って、また口を開く。

「──僕も泣いていたし。由貴、僕が心配なうちは自分も学校休むとか言い出して。結局由貴がついていてくれて落ち着いたけど」

 四季の紡ぎ出す凝縮された言葉に、その時の状況がただならぬものであったことは想像出来た。

「……」

 四季は「ごめん」と謝った。

「忍にこんな話」

「私が聞いたんだからいいよ」

 忍は受け止めるように言った。



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