時は今
忍は「とりあえず食べて」と四季に言った。
由貴が時々言うのが「四季、食べなくなる時があるから怖いんだよね」という科白である。
忍もそれは見ていて思う。おそらく食べる絶対量が少ない。
『気分悪くなっても、吐いてもいいから食え!』
由貴に怒鳴られたことを思い出して、四季は「うん」と言って食べ始めた。
「四季、好きな食べ物、何?」
「好きな食べ物…」
すぐには思いつかないのか、間がある。
「…何だろう」
「普通好きな食べ物は?って聞かれると、パッと思いつくもの、あるんじゃないの?」
スイーツかなと呟いているが、それは比較的ということで取り立てて言うほど好きなわけでもないらしい。
「…あ。苺」
「え?」
「苺は好き。…食べるなって指示受けているんだけど」
つまらなそうにパスタを巻いている。忍は可笑しくなって笑ってしまった。
「苺って…料理じゃないし。しかも食べるなって指示されてるって、四季」
「だって食べ物って言うから…。好きで食べられないわけじゃないのに」
「ごめん」
「四季が苺食べられるようになったら苺狩りに行こう」と忍は言う。
「忍は何が好きなの?」
「湯豆腐とか…。和食はだいたい好き。四季のところのお料理、美味しかった」
「そう。良かった」