時は今
「あの時ねぇ…。確かにうちの由貴くんは相当キレてたし、四季くんは四季くんでいろいろ傷ついてるし、涼ちゃんにも吉野さんにも心配かけて、かなり大変でしたね」
隆史は静かに語り始めた。
「最初はね、四季くん、白血病のことは『由貴には言わないで』って言っていたんです。もしドナーが見つかったら由貴に話すからって。四季くんなりに由貴くんを不安にさせたくない思いでそうしたんでしょうね。でもドナーが見つからなくて」
「──」
「で、その四季くんの彼女も何故だか病室に来なくなって。最初と…二度くらいは来たことはあるのかな?それ以降顔を見なくなって。四季くんも不安になるじゃないですか。でも由貴くんには言えなくて抱え込んでしまって。四季くんの妹さんなんかお兄ちゃんっ子だから、『何でお兄ちゃんがこんな状況になってまであんな彼女のことなんか心配するのよ』って怒ってて」
「妹さんて──」
「四季くんの妹さん、わかりますか?」
「…はい。先日譜面台が落ちる事故があった時、四季が無事だったことがほっとしたみたいで──泣いてました」
「うん。美歌ちゃんて言うんですけど…。元々お兄ちゃんっ子ではあったんですけど、四季くんが白血病で倒れてからは余計それが強くなってしまったというか…」
「……」
「で、結局由貴くんにはドナーが見つからないまま、本当のことを話すしかなくて。由貴くんはドナーが見つかろうと見つかるまいと何で最初に俺に話さないんだって怒るし。四季くん傷つけそうな勢いだったから、四季くんのお父さんが止めに入って」
(四季のお父さん)
『また食べにおいでね』と、ふんわりと笑った笑顔が印象的な人だった。
いろいろなことがあったのだ、と忍は四季の周りの人のことを思い出しながら聴いていた。
「──四季くん、いろいろ抱えきれなくなってしまったんだろうね。死なせて欲しいって言い出して──それでうちの由貴くんも強情だから『四季がご飯食べないなら俺も食べない』とか言い出して、最終的にふたりとも意地の対決になっちゃって。結局四季くんの方が折れて由貴くんの言うこと聞くようになって。そうでないと四季くん危なかったから、四季くんが折れてくれて良かったんだけど」