時は今
忍は隆史の話を聴いても別段動揺するわけでもなく、受け止めているようだった。
隆史はこの子は様子の違う子だな、と思う。
たんに四季の魅力的な部分に惹かれて好きになったというよりも、何か忍自身がそういうつらいことに何度か遭ってきているような目だった。
「失礼ですが…揺葉さんは四季くんのことでキャーキャー騒いだりする女の子には見えないんですが」
何故四季くんの彼女に?と尋ねる。忍はまたどう答えていいのか、迷った。
「……あ、すみません。無理に話してほしいというわけではないんですが」
「──。私、由貴くんのことが好きだったんです」
「は?」
隆史の方が驚き、揺葉忍をまじまじと見る。
「え、ええと…。揺葉さん?」
「でも由貴くんには彼女がいますから。それでひとりでずっと誰にも言わずにこのまま私の片思いで終わらせようと思っていたんです。──でもそれに気づいて支えてくれたのが四季くんでした」
忍は微笑む。
「優しいですよね。私のこと好きだと言ってくれたんです。私の気持ちを知っていて、それでも。だから、私は彼なら愛せると思いました。というより、もう、好きなんです」
「──」
「だから、四季くんがあれだけ傷ついた表情を見せるって、よっぽどだったんだと思って…」
「揺葉さん」
「私がもう少し早く四季くんと出会ってたら、倒れてもそばにいたのに」
あんな顔させなかったのに。
忍は何か自分のことでも痛いことを思い出したのか、頬に涙がこぼれた。
「すみません」と涙を拭う。
「私、いろいろとダメな人間なんです。もっと強くなれたらいいのに」
誰かを支えられるくらいに。
忍の言葉を聞いて、隆史が神妙な表情で言った。
「そうかな。僕は今、四季くんの彼女が揺葉さんで良かったと思ったけど」
「え?」
「というより、うちの由貴くんもねぇ…。すみません。あの子はそういうとこ鈍いんで。というより一途なのかな?せっかく好きになっていただいたのに申し訳ない」
隆史の言い様が可笑しくて忍は笑った。
「いえ。由貴くんは、桜沢さんを好きな由貴くんだからいいんです」
「ほう…。それはまた。そうでしたか」