時は今
教室の窓から忍と四季の姿を見送って、智が「忍もやる時はやりますなー」と感心したように言った。
涼がその横で「涼も会長とデートしたい」と呟く。智が「そうかい」と言い、由貴の方を見ると手を上げた。
「会長ー!涼も今から会長とデートしたいらしいぜ!」
「何ー!?」
駿が目を輝かせる。
「行け行け!!由貴!!行っちまえ!!」
由貴は赤くなる。
「バ…っ。行けるか!!」
恭介が笑っている。
「あー…これ大変だ。由貴、次の時間、先生に何て説明すんの?四季と揺葉忍のフォローすんなら由貴しかいないんじゃ?」
智があっけらかんと言う。
「四季が貧血か何かで倒れたんで、忍が病院に連れて行きましたで解決じゃねぇ?」
「あー吉野さん、それいい」
涼が「デートじゃダメなの?」と真顔で言う。智が「あのですね」と涼に言った。
「学生の本分は学校のお勉強よ?てか、涼。アナタ生徒会の副会長で成績も大変優秀な模範生でしょうが。…って何で私がこんな説明してんの」
「……。四季くんが何か悩み事がありそうな時に、忍ちゃんが一緒にいてあげたいと思うのより、学校の勉強が大事なことなの?」
きわめて純粋な疑問ではある。智も答えあぐねて、由貴に回答を回した。
「会長ー。お昼の電話相談室に桜沢涼さん16歳からのご質問です。回答をどうぞー」
「世の中、何が大事で何が大事ではないかなんて、まったく関わりのないようなところで回ってる大人の事情やら何やらあって、やってられないぜと言いたくなることはいくらでもあるので、子供の事情が通じないことは往々にしてあるものです。でも心情的には悩み事のある人を放っておけない思いやりがあることは良いことだと思います」
すらすらと何かの暗記文句のように由貴は答える。
黒木恭介が「…すげぇ」と呟き、涼はわかったようなわからないような表情で「覚えておく」と口にした。