時は今
校門を出てしばらく歩いてから忍は立ち止まった。四季を見上げる。
「──気分、良くない?」
そのあたりの気遣いは忍のままである。四季は大丈夫だと答えようとして…やめた。
素直に答えた方がいいと思ったからだ。
「お昼、あまり食べられなかった」
「…そっか」
四季は何となくそのことに対しても罪悪感があるようだった。
忍は安心させるように言う。
「食べられないことで自分を責めたりしないで」
「……」
「食べるのつらかったりする?」
四季は何か思うところあるのか、すぐには言葉が出て来なかった。やがて、言葉がこぼれる。
「食べなくても生きていられたら良かったのにって思うことはある」
──涙がこぼれた。
(ああ、やっぱり)
隆史の話を聞いていて、四季は四季だけにしかわからない、抱えているものがある──忍はそう思った。
話を聞いてみないとだめだ。
「四季。滝沢先生のところ、行ってみようか?」
「え?」
「あの近くなら落ち着けそうだし。前に行った時、公園見かけたし。ゆっくり話そう?」
「…うん」
四季は忍の目を見た。忍が真っ直ぐに曇りのない瞳で見ていてくれていることに気がついた。
「──忍」
「ん?」
「…何でもない」
「何でもないって、気になるよ」
「……。だって」
四季は恥ずかしそうに言葉にした。
「僕が忍に自分の思っていること話す時って、由貴のこと気にしている言葉だとか、『好きって言って』とか、そんなのばっかり…」
「それは私が不安にさせているのもあるからでしょう」
「でもそれで忍が僕に気を遣って由貴と話しづらくなるのは違う」
「じゃあ私と由貴が話していても平気?」
「……。…うん」
忍も納得したように「じゃあ由貴とも普通にする」と答えた。
ふたりは手を繋いで、立ち止まっていた道を再び歩き始めた。