時は今
学校に連絡を入れて後、詠一が「四季くんは何か食べさせた方がいいね」と言って、診療所の裏手にある詠一の自宅から肉やら野菜やらを少々持って来た。
「これを茹でて、ぽん酢でもかけて…」
「え?四季、野菜食べられるんですか?」
詠一が持って来たものは白菜とレタスと薄い豚肉である。
「…ああ。野菜は元々好きではあるようだよ。茹でたものなら食欲がない時でも食べるみたいだがね」
並べて茹でるだけだから作ってみなさい、と忍に材料を渡して行ってしまった。
忍は野菜を洗って切ると、詠一に言われた通りに土鍋に白菜、レタス、豚肉が綺麗な輪を描くように並べた。
個室のそばにある湯沸かし室でそれを茹で始める。
(四季、食べるといいけど)
忍は鍋の様子を見ながら眠っている四季のそばに座った。
やがて、いい匂いがしてきた。
四季が寝ついてからは一時間くらい経っている。
「──四季」
忍は静かに声をかけてみる。四季は目を覚ました。
「おかゆあるんだけど。あと、白菜とレタスと豚肉茹でてみたんだけど、食べる?」
四季は何度か食べたことがあるのだろうか。うん、と答えた。
忍はお膳に運んで来た。
「私、この料理、初めて作った。美味しいの?」
「──忍も食べてみる?」
「うん」
四季もひとりでは食べ辛そうだったため、忍は自分の分も入れて来て座る。
いただきます、と一口食べてみた。
「──あ。美味しい」
あっさりしていて食べやすかった。四季も最初の一口を口に運ぶと、後は自然に食べ始めた。
(良かった)
「滝沢先生が?」
「うん。これなら食べられるはずだからって」
「先生、僕の顔見て、今日は食べてないなとかわかるみたい」
「え?顔だけで?」
「うん。…何でわかるんだろう」
忍は笑ってしまった。
「先生すごい」
「しかも、その時食べられるもの、外すすことないし」
「えー?」
プロだね、と忍は言った。
たぶん、四季をずっと見てきているからわかるのだろう。
忍が入れてくれた分を四季はきれいに食べてくれた。