時は今



「──四季も、そういうことがあった?」

 忍は膝を抱え込み四季の表情を窺い見る。

「抵抗した?大きな力に抵抗するのにはとても精神力がいる。傷つくことでもある。間違えたら、跳ね返って自分の首を絞める」

「──うん」

「それでも抵抗する?」

「もし大きな力が間違っていたら『傷ついた』と伝えた方がいい。伝えることで変えられなかったものが、変わるかもしれない」

「……」

「僕は忍に自分の気持ちを伝えた時、見返りなんか求めなかった。伝えなければどうにかなりそうだった。抱え込んで傷ついているだけよりも、何かが変えられるのならと思った。そうして、今、忍がそばにいてくれる」

 忍は「そう」と呟き前を見た。

「──嵐が来て、激しい波が岩にぶつかる時、大きな音と共に水飛沫が飛び散る。それだけでは岩が崩れることはないけれど、それでも長い間、それが繰り返されると岩肌が波に削られて、荒々しい形になる。それが自然」

「そうだね」

「でも人は衝突する前に、ブレーキをかけられる。だからいつでも波のようにというわけにはいかない」

「出来るだけ穏やかな方がいい?」

「うん。でも何かを強要するのも度が過ぎれば傲慢だわ」

「自分に自制を強要するのは、それは自分に対する傲慢にはならない?」



< 278 / 601 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop