時は今



 その日の最後の授業が終わる頃に四季は教室に戻ってきた。

 教科は数学。教室の戸を開けてみると隆史と目が合った。

「おや。大丈夫ですか?四季くん」

「──はい。すみません」

 隆史は四季に優しい。にっこり笑ってくれた。

 席について今日進んだのが何処までなのかを理解したところで、チャイムが鳴った。

 授業が終わるや否や待ってましたとばかりに、駿たちが四季の周りにわらわらと集まってくる。

「で!?どーだった!?どーだった!?」

「どうだったって、何が?」

「何もなかったわけがなかろう!」

 四季は「…忍がごはん作ってくれた」と言った。

 駿が「なんと」と呟く。

「うらやましい限りだな、おのれは。俺らが授業受けている間に…」

 由貴が「ちゃんと食べた?」と聞いてくる。四季が「うん」と答える。

 由貴はある程度察しがついているのか、四季がきちんと食べたかどうかだけが気になったようだった。

 四季の顔色が良くなっているのを確認して、それ以上は聞いてこなかった。

 恭介が「四季は学校の授業よりもお昼時間をどう克服するかの方が難しい課題なんじゃないのか」と言う。

 そうだね、と四季が真顔で肯定する。

「ねぇ、もっと楽しい話、ないの?忍が可愛かったとか、きゃーとか、いやんな話」

「忍は可愛いよ。いつも」

「ええ!?どんなとこが!?」

「……」

 四季が駿の顔を何処か物憂げな眼差しで見て「秘密」と言った。にこっと笑う。

「可愛い忍なんて僕だけが知っていればいい」

「ん、な、な…」

 ぎゃーと駿が叫ぶ。

「せんせえー!!四季くんがいじめるー!!」

「いじめてないし」

「何なのソレ!!忍を食っちゃったの!?」

「秘密」

 恭介が「こんなことで敗北してんなよ、本田」と言う。四季も駿の反応を見て少し気の毒になったのか「本田くんが考えるようなことは何もしてないよ」と言った。

 本田がキッと四季を睨む。

「俺が考えるようなことって何だ!ゆーてみ!具体的に!」

「僕、本田くんじゃないから、わからない」

「むきー!」



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