時は今
いじける駿を見かねて、四季は本当のことを話し始める。
「忍が僕をあんなふうに誘ったのって、僕が精神的に不安定になっていたの、わかっていたからなんだと思う。──学校から出てすぐ、僕の顔色見て『滝沢先生のところ行こうか?』って」
駿はめずらしく真面目な表情になり、四季の机の上にひょっこり顔をのせてきた。
「四季くんは体調も芳しくなく、精神的にも何か落ち込んでいたと?」
「僕、精神的に不安定になると普段より物が食べられなくなるから。気分が良くなかったのはそのストレスもある。精神的に不安定になっていたのは、前につき合っていた彼女のこと思い出すことがあって。忍がそれで心配して」
四季の言葉に由貴が反応した。
「──真白に会ったの?」
四季が首をふる。
「ううん。輝谷音大附属高校の子たちに、土曜日偶然会って。その時忍を連れていたから、合唱部の園田さんに『彼女?』って聞かれて」
「何で?忍は四季の彼女って言わなかったの?」
「言ったよ」
「それで何で四季が真白のことなんか思い出すの。四季と真白のことを心配するような人でもいたの」
「いないけど」
「なら、四季が真白を気にかけることなんかない」
何やら由貴は怒っているようである。それも四季にではなく真白という人物に対して。
あのぅ、と駿が口を挟んだ。
「その…ましろさん?は四季くんの元カノ?」
「うん。そう」
「きちんと別れていないんだよ」と四季が静かに言った。由貴がそれで「別れるも何も」と言い放つ。
「四季がいちばんつらい時に支える気もなかったのに!?忘れた方がいいんだよ、あんな女!!」
由貴は由貴で積もる思いもあるのか、いつになく乱暴な言葉になっていて、周りが驚く。四季が「由貴、やめて」とお願いした。
「真白がどう思っていたかなんて、真白にしかわからないのに。そういう言い方やめて」