時は今
「──。元カノとうまく行かなくなったのは何で?」
恭介が波立った話を落ち着かせるように問う。四季が答えた。
「僕が病気で倒れたから」
「──」
「入院してしばらくして会いに来なくなって、そのまま──音信不通。後で知った話なんだけど、僕が入院して後、学校も休むようになって、そのまま転校。明るい子だったんだけど」
「……」
恭介にも駿にも、その言葉だけで四季の抱えている思いを推量するのは難しかったが、それで四季が傷ついていることは察した。
「四季くんは、真白ちゃんのことが心配なんですか?」
「──うん…」
四季は考えながら言葉にしていく。
「僕の病気が彼女を不安にさせてしまったのなら、言って欲しかった。それなら別れたから。死ぬかもしれない人間が彼氏って、つらいと思う。でも、そういうこと一言も言ってくれなくて、何もわからないまま連絡が取れなくなったから…」
「何で四季そこまで真白のこと庇うの?傷ついていたのは四季の方じゃないか。なら、真白に言えば良かったんだ。会いたいって。不安だからそばにいて欲しいって。それも出来ないなら真白は彼女じゃないねって」
「──由貴」
やや厳しい響きの声が由貴の言葉を遮った。四季ではない。忍の声だった。
忍がいつのまにか教室に来ていて、話を聞いていた。
「その言い方、四季に優しくない」
「──忍」
「四季が彼女をどう思うか、どんな言葉をかけるかなんて、四季が決めることよ。言いたくても言えない言葉が、それがどうして言えないのかなんて、考えればわかることじゃない」
そうだ。
四季が言えなかったのは──もう、四季自身が答えを言ってしまっている。
彼女が心配だったからだ。
もしかしたら自分のことでつらくさせてしまっているのかもしれない彼女の気持ちを考えたら、もう何も言えなくて。
「私も今、由貴に優しくない言葉、言っているのかもしれないけど」
──由貴はその時の四季をそばで見ていて、ずっと支えていたから、真白のことをこんなに怒っているのだ。
それはわかる。わかるけれど。
でも忍は言わずにはいられなかった。それで四季が傷ついているのが見ていられなかった。
由貴は忍に真っ直ぐにそう言われて、「ごめん」と謝った。