時は今



 おとなしい涼がこのタイミングであえて声をかけて来てくれたのは、紛れもなく思いやりだろう。

 四季は涼を見ると「ありがとう、涼ちゃん」と言った。四季の笑顔を見て、涼も自分のことのように嬉しそうな表情になった。

「──ところで、揺葉忍さん」

 本田駿が四季の机に顔をのせたまま、忍を見た。

「綾川四季くんとは何処までの関係ですか?この王子様、教えてくれないもので」

「え…」

 忍は駿の顔を見て少し戸惑って後、四季の顔を見た。四季が忍に説明する。

「何もなかったわけないだろうって聞かれて、可愛い忍なんて僕だけが知っていればいいって答えたら、拗ねてるの」

「──そう」

 忍は本田駿を見ると、涼しげにほほえんだ。

「知りたい?」

 ごくりと駿が唾を呑み込む。

「…知りたい」

「ふふ。添い寝までの関係」

「……な」

 な、なんじゃあ、そりゃああ、とさっきよりもさらに絶叫に近い感じで、駿が叫ぶ。

「何ソレ!!ごはん作ってもらったとか、何処までがホントなの!?」

 どちらも本当ではあるが、本当だと教える義務もない。

 四季と目が合う。四季も可笑しそうに笑っていて、忍も思わず笑ってしまった。駿の問いに答えを返す。

「秘密」

 駿がさらにいじける。

「せんせえー!四季くんと忍さんがいじめるー!」

 さらに笑い声が起こった。



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