時は今
交差点に立っていると、ふと、気になる声が聞こえた。
「ましろ!」
え?
智は一瞬、何処かで聞いた、と思いハッとする。
真白。四季の元カノ?
明るい子だと言っていた。ずっと以前に由貴から聞いた話だとかなり可愛い子だとも。
ましろと呼んだのは自分と同じくらいの高校生。あれは双葉高校の制服だ。
ましろと呼ばれた方は──。
長い髪をふわふわなびかせて、いかにも「妹キャラ」と言われそうな雰囲気の少女が走ってきた。確かに可愛い。
ましろ、家、この近くなの?
うん。
そんな会話が聞こえる。
智は携帯のメモリーを操作した。四季のアドレスがわからない。会長か忍かと迷って、忍を選択した。
由貴は真白に対してかなり怒りがあるようだったから。
『おはよう、忍。今、通学路の途中なんだけど。四季の元カノっぽい子がいる。ましろって呼ばれてた。双葉高校の制服着てる』
智はとりあえず『ましろ』の後を追いながら、忍の返事をしばらく待ってみる。双葉高校の制服を着たふたりの少女はバス停に立ち、バスを待ち始めた。
忍からすぐに着信が入る。
『もしもし、智?おはよう』
「おはよう。四季のアドレスわからなくて、忍に。忍、元カノは見たことある?」
『ううん』
「四季に話した方がいい?私じゃ判断つかない。その方がいいのか。忍の気持ちもあるだろ」
『……』
忍はしばし沈黙して、答えた。
『四季に話してみる』