時は今



 忍は携帯で智と会話をして後、ぼーっとした。

(四季の元カノ…)

 四季がまだ元カノに気持ちがあるとしたら、よりを戻してしまうこともあるのだろうか。

 そうなると、自分は──。

 不安が広がりそうになり忍は首を振った。

 大丈夫。私は大丈夫。

 私が折れたら、誰が四季を支えるの。

 忍は四季の携帯にかけた。

『──忍?おはよう』

「おはよう」

『どうしたの?』

「あのね。今、智からメールがあって、四季の元カノらしい子がいるって」

『え──』

 四季もどういうことなのか、すぐには把握しきれないらしい。言葉が止まった。

「ましろっていう名前、そんなにはないじゃない?智が交差点に立っていたら『ましろ』って呼ぶ高校生の女の子がいて、それで智、もしかしたらって思ったらしいの」

『…そう』

「髪が長くてふわふわしてて可愛い子って言ってた」

『──。真白、だと思う』

「……」

『ありがとう、忍。教えてくれて』

「ううん。私は智に教えてもらっただけだから」

『──忍』

「何?」

『僕が今好きなのは忍だから、忍は真白のことで不安になったりはしないで』

 忍は瞳の奥が熱くなるように感じた。

「──うん」

『僕の自惚れでなければいいけど』

「ううん。──安心した。この電話をかける前、四季がもし彼女とよりを戻したらなんて考えてた」

『不安にさせてごめん』

 四季の言葉は忍の心を抱きしめてくれるようだった。

『好き。そばにいてくれてありがとう』



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