時は今



 四季のピアノを聴いていると、心が元気になる。

 四季の部屋に来るまではつまらないことでイライラしていた由貴は、四季の家を後にする頃には何かとてもいいものを持って帰るような気分になっていた。

 寄り道して帰ろう。

 最短ルートを選ぶばかりが、ただ努力するばかりが大事なことではない。

 楽器店に立ち寄って、練習に良さそうな楽譜を幾つか見た。

 元々由貴は深く考えることが好きな性質だ。職人気質。

 細やかなつくりのもの、たとえばジグソーパズルのようなものを見ることや、実際に組み立てることが好きだったり、CDを聴いていても、作曲者や演奏者の気質や表現の仕方、その録音状況がどういう状況であったからそういう音になったのかとか、そういうところまで気になってしまう。

 どうして、そういうことが気になるんだろう。

 理由は説明出来ない。

 でも、最大の理由は感動しているからだと思う。

 心を震わせる何か、それに出逢った時に、心の中に幾つもの「何故?」が生まれる。

 「何故?」という探求心を持っている自分が常にいる。

 ドキドキするものを感じていたい。ふれていたい。

 まだ知らない感動にふれることは喜びだ。



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