時は今



 由貴はピタリと止まってしまった『春』に、気のせいかな、と思いはじめた。

 あきらめて立ち上がる。

 その時、静和に由貴の顔が見えた。

「あ…」

「静和、どうしたの?」

「この子、わかる。見たことある」

「どういうことなの?」

「撮影のあった日、白王の音楽室で綾川四季に会ったって言ったよね。その時四季と一緒にいた子。顔立ちが似ていたから覚えてる」

 由貴は制服の草を払い、歩き始めた。

 忍と静和の姿は見えていない。ふたりのそばをすっと通り過ぎて行く。

 由貴の後ろ姿を見送って、やがて静和が「何故聴こえたんだろう」と呟いた。

 由貴と話してみたくなった。



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