時は今



 それから四季は静かにミシンをかけていた。

 落ち着いた横顔。忍が四季を選んでくれて良かったと思う。

 白血病で倒れた時に、病気のことと真白のことで精神的に不安定になっていた四季を知っているから、忍を好きになってつき合うようになった四季の経緯を見ていると、このままでいてほしい気持ちになってしまうのだ。

「四季」

「ん?」

「──忍、どうだった?」

「え…。うん。お祖父様やお祖母様とも話していたし…少し安心したって言ってた。綾川の家に本当に来てもいいのか、不安になっていたみたい」

「そう」

「……。それとも、夜何かあったかっていうこと?」

「え」

 生真面目な由貴は表情を堅くして、わずかに赤くなった。

 四季は優しく笑う。

「ふふ。何で由貴が赤くなるの?」

「…なってないし」

「ふーん…」

 四季はすぐには答えなかった。でも、その表情から忍とはうまくいっているであろうことは見てとれた。

「由貴も」

「…うん?」

「頑張って」

 四季がにっこりした。

 由貴が何とも言えない表情になる。

「…それって」

「言わないでね。騒ぐ人、多いから」

「うん。…というか」

「何」

「…俺がショック受けてるようなこの心理は何?」

「え…。ショック?」

「うん」

「ショック受けなくてもいいことだと思うけど」

「そうなんだけど」

「焦ったらダメだよ。由貴には由貴のやり方で涼ちゃん大事にして」

 真面目な言葉が四季からは返ってくる。

 忍を大事にしている四季だから言える言葉だと由貴は思った。

「そうだね」



     *



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