時は今
聞かれたら答えるということにしたのはいいが、休み時間になるとどこから話を拾ってきたのか、本田駿が四季を問い詰め始めた。
「ねーねー、四季くん」
「何?」
「昨日揺葉忍が四季くんの家にお泊まりしたってホントですか?」
四季は答えあぐね、駿は可愛らしく?顔を覗き込んだ。
「にゃん?」
「…本田くん」
「にゃんですか?」
「忍、女の子だから、そういう話やめてあげて」
「はぅ…」
「その情報源は何処?」
「んー。女の子たちですよ。音楽科の」
「2年?」
「そう。なんだろね。四季くんのファンが張り込みしてるとか?或いはあることないこと言いふらしてるとか」
「そう。ありがとう」
「して?真相のほどは?」
「本田くん、さっきの僕の言葉聞いてないね?」
「好奇心が勝ってみたりみなかったり?」
四季はため息をつくと答えた。
「忍ね、いろいろ事情があって、綾川の屋敷内に住んでいるの。涼ちゃんの家に住んでいたのは知ってる?それの綾川家バージョン」
駿は目をぱちくりさせた。
「ななななんですと?」
「騒がないでね。デリケートな問題だから。忍のお母様のご実家の事情も関係してる。それで僕のお祖父様が忍を保護する形になって」
「……」
よろりと駿の身体が傾く。
「なーんーでーすーとー…」
四季はふっと表情を崩す。
「こういう話が楽しいっていうのは何となくわかるけど。忍、僕の彼女だから、本田くんあきらめて。ごめんね」
「ん、な」
「可愛い女の子はひとりだけじゃないでしょ?」
「それは可愛い女の子はひとりではないが、揺葉忍はたったひとりではないか!」
「だから僕の彼女だから、忍はダメ」
「なんじゃそら!ずいぶんな!四季くんなら引く手あまたよりどりみどりだろうが!」
「僕が愛しているのは揺葉忍なの。女の子なら誰でもいいなんて感覚、女の子に失礼だよ」
「うぐぐぐぐ」
駿は恨めしそうに四季を見る。
「この四季くんったら、転校してくるなり女の子たちの関心をかっさらって行ったかと思いきや、その中のいちばんナイスな女の子を颯爽とゲットですかい。もーウラヤマ過ぎて言葉もないわい」