時は今
(衣装作るのも、こんな雰囲気では雛子は楽しくないかもしれない)
そんなことが脳裏をかすめた。
忍は「ちょっと、ごめんね」と立ち上がると、雛子のところに歩いて行く。
「高遠さん」
雛子は予期していなかったことにどういう表情をしていいのかわからないようだった。
杏とほのかも忍の行動に呆気にとられて見守ってしまう。
「何?」
やっとそれだけの返事をする雛子に、忍は言った。
「サイズを測っておきたいから、後で更衣室に来てもらっていい?高遠さんの衣装はきちんと測った方がいいつくりになっているから」
忍の表情はいつもの落ち着いた揺葉忍だった。それで雛子も承諾する。
「わかったわ」
緊張していたのは本人たちよりも、それを見ていた周りの方だった。
ほっと緊張の糸が解けたようだった。
*