時は今
「──。忍ちゃん、どうしたの?」
綾川の家に帰ると、庭先で祈が花を愛でていた。
祈は休日らしい。忍の顔を見て心配げな表情になった。
四季が「事情があって」とだけ言うと、特に理由については言及しては来なかった。
「傷に効くものあったかな…。探してくるね」
「あ、いいです。祈さん」
祈から忍に愛嬌のある笑みが返った。
「お父さん、でいいよ。忍ちゃん」
「…え」
忍の脳裏ではいろいろな考えがよぎっていく。
(お父さんって──)
まるで四季と結婚してしまっているみたいではないか。
「お父さん、忍がびっくりしてるよ」
四季がフォローする。
祈が明るく言った。
「あは。でも僕はもう忍ちゃんうちの子だと思ってるからねー」
そういえば、そうなのだ。養女の立場ではあるから、四季と結婚していなかったとしても「綾川の家の子」ではあるのだ。
「そのうち、お父さんって呼んでね」
祈は家の中に入って行ってしまった。
「…四季」
「何?」
「私、綾川の家で、どう振る舞ったらいい?形としては養女ではあるんだけど…。間違えると失礼なことにはならない?」
四季は少し考えて答えた。
「僕とつき合っていることはお祖父様たちも知っているから、許婚者として振る舞っていいと思うよ。養女扱いになっているのも、お祖父様がそのことを認めていなければ、そうはならないから」
「そう」
「そんなに、構えなくていいからね」
「うん…。由貴が話していたんだけど、四季、何名か婚約者候補がいるようなこと聞いたんだけど」
「ああ…。家の中で話そう。忍、風邪ひきそう」
いつもなら「大丈夫」と答える忍だが、今日は体調に自信がなかった。
四季に気遣われて家の中に入って行く。
靴を片づけていると、四季の携帯が鳴る。
「メール?」
「うん。由貴。今からうちに来るって」
「ふーん…。時々来るの?」
「大体がピアノ弾きにね。でも文化祭準備で生徒会忙しいはずなんだけど…」
「何かしら」
「気になる?」
四季が忍を窺った。