時は今



「四季、我慢し過ぎ」

 由貴は四季の頭を抱き寄せた。

「いろいろなもの抱え込み過ぎ」

「…抱えてないよ」

「嘘ばっかり」

「ふふ。でも、本当に抱えてないよ」

 四季の言い様も表情もすっきりしている。

 つらいことがあっても、自分の痛みは誰も代わりには負ってはくれないことに、幾度となく出逢ってきている表情だった。

 それが少し、由貴は悲しい。

「俺、四季にもつらいことがあったら、いつでもそう言って欲しいと思っているんだけど、それは俺だけが願っていることで、四季にはつらいことだったりする?」

「…わからない」

「そういうことを考える気はないの?」

「……」

 四季はぼーっとした表情で、穏やかに答えた。

「つらいことは言葉にしただけつらくなる。だから言わない」

「……」

「これじゃ、由貴の望むような答えにはならないの?」

 四季がそう言葉にする以上は、四季の心を判りたい一心でそう思う自分の気持ちは、四季にはつらいことでしかないんだろうか。

 思っていると、四季が話しかけてきた。

「──由貴、少しきつい」

「え?」

「…ごめん」

 四季がだるそうに、ソファに身を持たせかける。

 由貴は四季の額に手をやった。

「四季、熱ある」

「平気」

「…平気って」

「大丈夫。由貴、お願い。僕の心を波立たせないで。本当にきつい。今日、いろいろあったし」

「…どうしたらいい?」

「僕は由貴が元気でいてくれたらいい。それだけでいい」

「──」

 当たり前のようで、この状況からは思いつかない回答をよこされて、由貴は戸惑う。

「…そんなこと言われたって」

 四季は澄んだ微笑みを見せた。

「大丈夫。ありがとう」

 そう言われてしまうと、もう何も出来ない。



< 457 / 601 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop