時は今
「四季、我慢し過ぎ」
由貴は四季の頭を抱き寄せた。
「いろいろなもの抱え込み過ぎ」
「…抱えてないよ」
「嘘ばっかり」
「ふふ。でも、本当に抱えてないよ」
四季の言い様も表情もすっきりしている。
つらいことがあっても、自分の痛みは誰も代わりには負ってはくれないことに、幾度となく出逢ってきている表情だった。
それが少し、由貴は悲しい。
「俺、四季にもつらいことがあったら、いつでもそう言って欲しいと思っているんだけど、それは俺だけが願っていることで、四季にはつらいことだったりする?」
「…わからない」
「そういうことを考える気はないの?」
「……」
四季はぼーっとした表情で、穏やかに答えた。
「つらいことは言葉にしただけつらくなる。だから言わない」
「……」
「これじゃ、由貴の望むような答えにはならないの?」
四季がそう言葉にする以上は、四季の心を判りたい一心でそう思う自分の気持ちは、四季にはつらいことでしかないんだろうか。
思っていると、四季が話しかけてきた。
「──由貴、少しきつい」
「え?」
「…ごめん」
四季がだるそうに、ソファに身を持たせかける。
由貴は四季の額に手をやった。
「四季、熱ある」
「平気」
「…平気って」
「大丈夫。由貴、お願い。僕の心を波立たせないで。本当にきつい。今日、いろいろあったし」
「…どうしたらいい?」
「僕は由貴が元気でいてくれたらいい。それだけでいい」
「──」
当たり前のようで、この状況からは思いつかない回答をよこされて、由貴は戸惑う。
「…そんなこと言われたって」
四季は澄んだ微笑みを見せた。
「大丈夫。ありがとう」
そう言われてしまうと、もう何も出来ない。