時は今
由貴は、祈と忍のいるキッチンの方へ顔を出すと、話した。
「祈さん、ありがとう。四季と話せた」
「そう」
「……。気持ちを言葉にすることに後悔はないんだけど。でも、口にさせてはいけないことや、そっとしておいた方がいいことは、あるのかもしれない」
そう言った由貴の表情には若干寂しそうな色が浮かんでいた。
「由貴くん、四季って結構感覚的だし、わかりにくいところあるかもしれないけど、難しく考えなくていいよ。四季は、由貴くんのこと好きだから、由貴くんがこんなふうに気にかけてくれるだけで嬉しかったりすると思う」
「そう…なんですか?」
忍が祈の言葉に頷いた。
「四季は心の全部をわかってもらえなくても、たぶんいいのよ。それよりも、大事に思える人がいることが大切みたいだから」
小さい頃から一緒に過ごしてきている由貴にも何となく四季の気質はわかる。
思っていることを主張することは少ない四季だが、美歌や自分といて楽しそうにしていることは伝わってくるのだ。
たぶん四季は人が好きな人なのだろうと思う。
だから、そこはかとなく人なつこい雰囲気を漂わせていて、何故か人が寄ってくる。
人の好奇心をくすぐる雰囲気があるのだろう。
それから──。
「忍、ありがとう」
由貴は忍を真っ直ぐに見て、そう口にした。
「忍に俺が出来ることは何もないんだけど、ありがとう。それだけ」
「──うん」
忍も由貴を真っ直ぐに見て言葉を返した。
「私も、ありがとう。由貴のこと好きになって良かった」
由貴は意外そうに忍を見る。忍は笑顔だった。
「もし、由貴に出会っていなければ、好きになっていなければ、四季に出会うことも、好きになることもなかったかもしれない。だから、ありがとう」
こんな告白のされ方は由貴には初めてだった。
困ったように頭をかく。
「あー…。揺葉忍にこういう科白言わせてたら、俺、本気でやばいんだけど。各方面から殺されそう」
「大丈夫よ」
「…うん。大丈夫にする。四季、少し熱あるみたいだった。大丈夫だとは言ってたけど」
「そう」
「じゃあ俺、帰るね」