時は今
「四季は大丈夫だった?」
忍は逆に四季の身体の方が気になっていた。
編入してきた頃は、まだ免疫機能が十分に回復していないとか聞いていたから、そういうことはまだ避けた方がいいのではないかとも思われたからである。
四季は「大丈夫」と答えた。
「白王に来てから強くなったみたい」
いつになく目が力強い。
「というより、強くなる」
言い切られた。
忍の手をとる。ピアノを弾くための四季の手。その手が忍のことをも捕らえている。守ってくれるように。
──泣けてきそうになった。
「……。四季、私ね」
忍は考えて出した答えを口にする。
「進学科には移らない。四季にも音楽科に移ることはしないで欲しい。今は」
「……」
「高遠さんはそんなことは望んでいないの。たぶん、高遠さんは私のことも認めてくれているの。感情の表現が非凡だから人からいろいろ言われてたりするけど」
「……。忍、高遠さんが忍にしていること、わかってる?普通に見れば、高遠さんは誰から見ても明らかに忍のこと傷つけているんだよ」
「見えない傷もあるわ」
「高遠さんが僕を好きだということ?でも僕が忍を愛している以上、それはどうしようもない」
「四季」
「僕が揺らいでいたら、ダメだと思う。これで僕がはっきりしない態度でいたら、誰が僕の彼女なのか、大事にされるべき存在はどちらなのか、わからなくなってくるよ」
「うん…。でも、もう少しだけ待って」
「忍。我慢ばかり覚えたらダメだよ」
「──」
「心が壊れるまで頑張ってしまう人も、いると思う。僕には忍がそういう人に見えている。違う?」
「…そんなこと言われてもわからない」
忍は俯く。四季は「責めているんじゃないよ」と言った。
「自分の心を言葉にすることがわからなくなるくらい、気が張ってたり、気を遣っていたりするのかもしれないってことだよ。だから僕は無理に忍に心の中のことを言葉にしてほしいとは言わない。それ自体がひどく精神力を要することなのかもしれないから」
それは…と忍の胸にある想念がよぎる。
「四季はそう思うことがあるの?」