時は今



 美歌も普段凛としてはいるが、その感覚は理解出来る。

 好きでもない人には、身体も心も許さないという潔癖な心理。

 四季から忍のことは聞いてはいた。男性恐怖症なきらいがあるということと、その理由も。

 だが美歌には、それが本当ならなおさらのこと、知りたいものに思えた。

「お兄ちゃんの腕、優しかった?忍さんの心を守ってくれた?」

 美歌の目は雛子のように挑んでくる目ではなかった。

 四季の好きな人と認識した上で気遣ってくる目だった。

 美歌は忍の髪にそっとふれた。

 忍はびくりと肩を震わせたが、美歌が優しくふれてくるので、だんだん心が鎮まってきた。

 そうしているうちに、忍の目からほろ、と涙がこぼれ落ちた。

 美歌は驚いて忍を見つめる。

「…忍さん」

「ごめんね。…ほっとしたの」

「……。お兄ちゃん、よくこうしてくれることあるの」

「──」

「美歌も、好き。ほっとする」

 忍も美歌の髪に手をのべる。撫でてみると、美歌は嬉しそうにした。

 美歌はそのまま、忍に抱きつくと、ベッドの上に押し倒した。

「ふふ。忍さん、一緒に眠ろう」

「美歌ちゃん」

「美歌、忍さん好き。忍さんのことも知りたい」

 柔らかくて温かい美歌の感触を受け止めて、忍はぼうっとする。

(──私、安心してる)

 肌がふれあったから──だけではないだろう。

 美歌が心をあたたかくしてくれた。

 そんな気がした。



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