時は今



 夕食を作って四季が忍の部屋を訪れると、忍と美歌が一緒に眠っていた。

(どういう状況なんだろう…)

 何だか女の子同士の禁断の世界に踏み込んでいるようで、落ち着かない。

 声をかけてみた。

「忍。美歌」

 美歌の方が目を開けた。

「ん…。お兄ちゃん」

「ご飯出来たよ」

「お兄ちゃんが作ったの?」

「うん。…どうして忍と美歌が一緒に眠ってるの?」

 美歌は忍の穏やかな寝顔を見て、くすっと笑った。

「秘密。──忍さん、あったかい。いい匂いするの。美歌、忍さん好き」

 仲がよいのは悪いことではない。四季もそれ以上は詮索はしなかった。

「忍さんにね、唇の怪我どうしたのって聞いたの。お兄ちゃんのことが好きな子に傷つけられたって…本当なの?」

「本当だよ」

「──大丈夫なの、忍さん。さっき話した時も震えていたわ」

「……」

 四季は忍を抱いた時のことを思い出した。

 拒絶するかのように震えているように見えた忍は、四季のことを拒否はしなかった。

 男子の興味をひく雰囲気を持ちながら、周りに男子は寄せつけず、かたくなに一途に、由貴のことを想っていた揺葉忍。

 その瞳が、いつのまにか自分を真っ直ぐに見て、映してくれていた。

 受け入れてくれた。

 身体の奥がじんとするような、泣きたくなるような感じ。

 愛しくて抱きしめたくなるというのは、こういう気持ちのことを言うのだろうと思った。

「…忍、泣く時、静かに泣くんだよね」

「──」

「恐怖を通り越して、ただ涙だけがこぼれてくるみたいな泣き方する。最初、それを見ていて胸が痛かったんだけど、忍が『四季だとほっとして涙が出てくるだけなの』って言うから──ああ、これは僕だから安心しているんだと思って」

 先刻の忍を見ていて、美歌にもそれは想像出来る気がした。



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