時は今
優しい雰囲気の四季と、活発な美歌と、堅実な印象の由貴。
それぞれの個性は同じ時期を一緒に過ごして確立していったもののような気もする。
「由貴は小さい頃からあまり怒られない子なんだよね。誰からも」
「四季は?」
「うん…。僕は食事のこととピアノのことと、あと…いろいろな意味で強くなれとは言われる」
「由貴お兄ちゃんは独りっ子だし、お母さまが心臓悪かったから、本当にしっかりしてたのよ。子供の頃から。それこそ、隆史おじさまが『うちの由貴くんは子供らしくない子供なんじゃないか』って心配するくらいに」
子供らしくない子供──。
「忍と由貴は、少し似てるよね」
四季の指摘。忍は意外そうな顔をした。
「私と由貴?」
「うん。忍も怒られるような子供ではなかった感じする。怒られたとしても、理不尽な怒られ方をする子供。怒る側の八つ当たりであったり…不当に当たられる、というか」
「……」
「…当たってる?」
忍はすうっと昔のことを思いめぐらせた。
怒られた記憶は母親のものが強烈に残っていた。
あとは…誰だろう。
子供だから何かしら何処かで怒られてはいるはずだが、覚えていなかった。
「母にはよく怒られていたけど」
忍はそれだけを端的に言った。
「私は要らなかったのかもしれないって思うこともあった」
テーブルの上に五百円硬貨が置かれていることが週に何回か。
それを持って出かける。
スーパーに行くまでの道程にパチンコ屋があって、自分と同じくらいの年頃の子供が、パチンコ屋の前のベンチに座って菓子パンとジュースを買って食べていた。
──誰か待ってるの?
──うん。お母さん。
子供はパチンコ屋を指差した。
──疲れちゃった。パチンコ、面白いのかな。
子供は退屈そうに言った。忍はいろいろな苦労があるんだなと思った。
──でも、居場所がわかるからいいね。
──何で?お母さん、何処に行ったのかわからないの?
忍は曖昧な笑みを浮かべた。
──私よりも好きな人のところにいるのよ。