時は今



「そんなふうに捉えることないと思うけど。私は四季の抱えていたものと同じ痛みを抱えていたわけではないから。でも四季は綾川の家に生まれて良かったんだと思うわ。こうして元気でいるでしょう?」

「美歌も、お兄ちゃんは綾川四季で良かったと思うわ」

「そう。…美歌は?」

「え?美歌は、欲張りだから秘密。言い出したらキリがないから」

 台所では祈がロールキャベツの火を止めたところだった。

「あ、来た。これ美味しい。四季、何入れたの?僕のレシピじゃないよね」

「え…その辺の」

「その辺のって四季」

「調味料の味を見て、入れたら美味しいかなって思うものを入れただけ」

「お兄ちゃんの作る料理は大丈夫よ。うすい味つけになっているから、物足りなければ好みで味を足せばいいんだもの。逆はダメね。濃く混ざったものは澱んだ味になっちゃって」

「トマトにしたら酸味が強くなるから、何となく傷が痛そうと思ってコンソメにしたんだけど。…どうなんだろう」

 四季は忍のことを考えて作ってくれたらしい。

 それが嬉しかった。

 忍が味を見て、顔をほころばせた。

「うん。美味しい」

「…良かった」

 祈がお皿によそいはじめた。

「四季もきちんと食べてね。忍ちゃん、四季、作るだけ作ってあまり食べないことあるから、見てて」

「あ…。はい」

 四季は困ったような様子になり美歌が元気に言った。

「大丈夫!もしお兄ちゃんが食べられなかったら、美歌が代わりに全部食べてあげる!」

「それじゃダメなんだってば」

 祈がツッコミを入れ、忍は可笑しくなって笑い出した。



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