時は今
4限の数学の授業が終わっても四季がまだノートを広げたままでいると、隆史が声をかけてきた。
「わかりませんか?」
「あ…。うん。答えは2だと思うんだけど…」
「はい?」
正答ではある。正答なのだが、わからない様子であるのが謎だ。
「いや、当たっていますよ。でもその過程は?」
「それがわからないから、考えてる」
「いや、あの、四季くん、その答えはどうやって導き出したんでしょうか?」
「うん…。問題見ていると、パッと答えが見える時ってない?何となく2かなって…」
数式をすっとばして正答にたどり着いている四季の方がある意味すごい。
だが、試験なんかでは過程まできっちり書かないと減点されることも、ままある。
隆史は、解き方の説明をし始めた。
「──四季ってたまに、いきなり結論でドンピシャな答えにたどり着いてる時あるよな」
恭介が「何でこんなんで答えだけがわかるんだ?」とぼやいている。
駿が「音楽でコーダとかいうのがあるじゃないですか」とわけのわからないことを言った。
恭介は駿を訝るように見る。
「は?数学の話だろ」
「いや、だから四季くんの思考の構造が楽譜みたくなってて、ある程度の話を聴いていると、その話の音楽的構造が感覚的に理解できて、そこからコーダに飛んでフィーネでオッケーみたいな」
「…なんじゃそら」
それはそれで四季らしい気もするが、恭介には想像つかない感覚である。
四季は隆史に説明されて何となく理解する。何度か同じような問題を解けばわかるだろう。
「…ありがとう、おじさん」
四季はすっきりした表情になり──思い出したように隆史に話し始めた。
「そういえば、話があったんだ」
「何ですか?」
隆史は高遠雛子のことかと思って聞く姿勢になるが、四季から聞かされた話は予想もしていない内容だった。
「新年に親戚が集まる時に、隆史おじさんさえ良ければ、家に来させなさいって。お祖父様が」
「え…」
隆史は表情を硬くする。
一体今頃何故。
…あの厳格な父親が。