時は今



「……。何故今その話が?」

 心中はかりかねる思いで、その言葉を絞り出すと、四季は隆一郎のことを思い浮かべるように言った。

「いろいろ思うところあるみたい。お祖父様も。でもやっぱり隆史おじさんのことは気にはかけているよ」

「……」

 四季は隆史を気遣うように、もうひとこと言い添える。

「お祖母様は、新年だとみんな顔を揃えていて居心地が悪いかもしれないから、年が変わる前にでもそっと家に来た方がって言っていたんだけど」

「…そうですか」

 隆史は両親の言葉を反芻しているようだった。

「…隆史おじさん」

「はい」

「お祖父様、由貴を見た時、『もっと早く会っておけば良かった』って思ったんだって。僕に言っていたんだけど」

「由貴くんに?」

「うん。それは隆史おじさんに対しても同じことだと思うよ」

 「僕がお祖父様の立場ならそう思う」と四季は言った。

 四季の素直な言葉は隆史の心に響いた。

 これからも会わないということに、意地はなかっただろうか?

 会わないということが、そんなに大事なことだろうか?

 会えば、過去のように、お互いにぶつかるだろうか?否、それはないだろう。

 ぶつかる理由はとうの昔に過ぎ去ってしまったし、少なくとも自分はそのことでとやかくぶつかる気もないからだ。

 会ってみて、話をしてみたら、何か変化はあるだろうか?

「…考えておきます」

 隆史は弱ったように笑った。

「あー、てっきり高遠さんのことで相談されるかと思っていたのに」

「高遠さん?…ふふ。うん。たぶんもう大丈夫だよ」

「話をしてみたんですか?」

「うん。もう疲れた、っていうことを高遠さんに伝えたら、案外、高遠さんもすんなりわかってくれた。それでも懲りないんだけどね、あの人」

「おやおや、四季くんにそこまで言わせちゃいましたか」

 隆史は苦笑する。

「人間って単純だけど難しいね」

 四季は柔らかく言った。

「…隆史おじさんも頑張って」

 隆史はその言葉を受け止める。

「はい。頑張ります」



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