時は今



 ヴェンツェルは料亭の近くをくまなく探し回ったが、それきり、忍と四季の姿は見つけられなかった。

 あきらめたところ、偶然バス停の近くにある掲示板に目を止め、ひとつのポスターを目にして動けなくなった。

「…アヤカワ、シキ…」

 白王の文化祭のポスターだった。ついさっき、忍と一緒にいた男子の写真があった。

 彼はピアノを弾くのか。

 ポスターの中に忍の名前も見つける。

「……」

 ヴェンツェルはポスターに書かれた文化祭の日時を記憶して、忍が拒否しているのなら彼をあたってみるのはどうだろうと考えた。

 葵が住んでいるアパートは探し当てたヴェンツェルだったが、そこには葵も忍も、もう住んではいなかった。

 大家に話を聞くと、葵の方はもうずいぶん前から行方知れずで、忍の方も葵がいなくなってしばらくしてから消息を断ったという。

 葵と忍がいなくなって後、桜沢とかいう家の主が葵に代わり、家賃を払って行ったらしいのだが。

 その桜沢という家も訪れてはみたのだが、家の主は何故か「忍に関しては教えることは出来ない」との一点張りで、そこでお手上げになってしまったのである。

 忍は綾川四季を信頼しているようだった。

 綾川という名字は、そう多くはない。生徒に聞けばわかるだろうか。

 ヴェンツェルは再び学校の方に足を向けた。



     *



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