時は今
四季の言い様に余分な私情が含まれていないことが忍の心を穏やかにしてくれた。
「──いろいろな人はいるのね。親ではあっても。頭ではわかっているつもりなんだけど」
「全部を頭でわかってしまえる人になると、その分味気無いことになってしまうと思うけど」
「…それもそうね。でもごめんね。こんなことで落ち込んで。四季まで気分が暗くなっちゃう」
「僕は大丈夫だよ。忍の心が波立っている時は、その分一緒にいられる時間が長くなると思えばいいし」
「そう?」
「そう」
ものは考えようかもしれない。
「ゆっくり考えた方がいいこともあるのかな」
すぐには答えの出せないこともある。ヴェンツェルのことはそんなふうに思えた。
四季も「そうだね」と言った。
とりあえず部屋の前で四季と別れ、忍はひとり部屋で着替え始めてから──ふと「夫婦って血が繋がっていないんだな」と不思議に思えた。
当たり前ではあるのだが、そんな人同士が家族になるというのが何だか──。
(素敵)
それが長く続いたら本物になるのだろうか。
着替えてから居間に行くと、早瀬がニッと笑った。
「おや、来たね。そのまま部屋に籠っちまうかと思ったんだけど」
忍は早瀬のその表情を見て、シャンとした気分になる。
「お母さんの顔を見ている方が元気になります」
「へえ?」
お世辞──のようではない。意味ありげな忍の物言いに、早瀬は眉を上げる。
忍は早瀬の竹を割ったような気性が好きだ。清々しい気分になるから。
「で、何があったんだい?」
早瀬は、忍が自分のことをどう思っているのかはさておき、そう尋ねた。
自分のことをどう思っているのかなんて、忍を見ていたら追々わかってくることだからだ。
忍も早瀬の「話したくなければ話さなくても構わない」というような、あっさりした雰囲気の物言いに、気分が重くなることもなく、さっきの出来事をすんなり話していた。
「父に会いました。私がまだ小さい頃、家を出ていったきりの人」
早瀬は目をまるくした。