時は今



 忍の話だけでは早瀬にはいまいちどんな状況だったのかがわからない。早瀬は四季にも聞いた。

「どんな話をしたの。あんたはどう思った?」

「忍のお父さんが何をしていたという話までは聞かなかった。でも忍のお父さんの言い様は、忍の気持ちを逆撫でする。忍のお父さんにはそのつもりはなくても。僕は忍の隣で話を聞いていて、気さくで話しやすい人だとは思ったけど、この人の伴侶になる人は大変だろうという感じは窺えた。もし、忍のお父さんが忍のこれからのことを話に来たのなら、綾川の家の人間──お父さんとお母さんか、お祖父様たちかが忍のお父さんと直接会って話をした方がいいと思う」

「なるほどね。その父親は?何処にいるのか言ってた?」

「そのことについては何も言ってなかった。というより、忍のこと探すのに頭がいっぱいで、ご飯食べるの忘れていたって、さっき一緒にいた時にご飯を食べていたから、泊まるところとかも考えていなさそうな感じだった」

「…はぁ」

 早瀬はまたため息をついた。聞けば聞くほどわけのわからない人物である。

 早瀬は自分がガチガチの堅い人間だとは思わないが、この父親の人間性は、そこらへんの一般人の物差しで測ってはいけない気がする。

 慰めるように忍の頭を撫でた。

「親があんなだと子供は苦労するね。あんたも気に病むんじゃないよ。親が元気は元気だったんなら、それだけでも良かったじゃないか」

「…はい」

 早瀬の言葉に、忍は少し気が楽になる。元気でいてくれただけでも。

 他人のことと比べて、他にももっと報われない人がいるのだからという視点で、自分を幸せだと思おうとする感じ方は忍は好きではないが、父は元気でいてくれたのだということには、ほっとするものはあったからだ。



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