時は今



「──そうですか」

 綾川四季。感じのいい男子だった。向かい合って話していても必要以上に緊張する気配はなく、話しやすい印象の。

 そう、物腰がいいのだ。

 それはこの教師にも共通する。

 隆史の方は四季や忍についてのことを何処までヴェンツェルに話していいものか、迷った。

 ヴェンツェルにはヴェンツェルの事情があるのだろうが、忍が四季の家に住んでいるということを話せば、ヴェンツェルにしてみれば「何故?」ということになるだろう。

 隆史にも忍の母親の実家──九頭竜のことはわからないし、その話を求められても困る。

 隆史はヴェンツェルに訊かれる前に、忠告した。

「揺葉忍さんに関してのことでしたら──私では答えかねます。というのは、忍さんの母君にあたる九頭竜の家の方で、どうも、家のご事情があるようで──詳しくは話せないのです」

 ヴェンツェルは困ったように肩を落とす。

「私、サクラザワという家の主にもシノブのことを聞こうとあたってみたのですが──ダメでした。シノブは何か、不可解な事件にでも巻き込まれているのですか?アオイのご実家のことがあるにしても、様子が変です」

「あおいさんというのは?」

「妻です。シノブの母です」

「…そうですか」

 隆史はため息をひとつつき、ちょっと電話をしても?とヴェンツェルに確認をとった。

 早瀬に確認をとろうと思ったのだ。

 隆史が何とか話をつけてくれる様子に、ヴェンツェルは「どうぞ」と了承した。

 隆史はヴェンツェルからは少し離れ、携帯で早瀬の番号にかけはじめる。

 何回めかのコールで、早瀬が携帯に出た。

『はい。あたし。何?何かあったの』

「ああ、早瀬。良かった。今、話しても大丈夫?」

『今日は休みだから平気。で?』

「揺葉さんのことなんだけど。彼女のお父さんが今学校に来てて」

『え?マジで?』

「それが本当なんですよね」

『忍ね。あの子さ、さっき目泣きはらして帰って来たよ。四季が一緒で良かったわ。その父親、大丈夫なの?だいぶ、ぶっ飛んだ人みたいだけど。四季が心配して、忍とそのお父さん?話させるのは忍の神経逆撫でするからって、今度父親が何か忍にコンタクト取ろうとするなら、あたしか祈か、うちの両親が話をつけた方がいいんじゃないかって言ってたんだけど』

「ええ!?」



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