時は今
「四季、見てすぐに読める?」
「…ううん。読みやすい筆跡ではあるけど。ごめん」
忍は手紙を見ながら言葉にしはじめた。
愛する孫、忍へ。
この手紙が書けることを嬉しく思います。私の方からあなたのところへ訪れることが出来たらどんなに嬉しいかしら。
あなたのお父さんは本当に困った人ね。ごめんなさいね、忍。私がそばにいたならあなたを長いことひとりにさせなかったでしょうに。
私に孫がいるということを知ったのは、本当にここ数年くらい前のことなのです。
何処の誰と結婚したのかもわからないくらいでしたから、あなたのことを探し当てるのも、本当に時間がかかりました。
私は今ひとりです。
いいえ、周りに人はたくさんいます。心がひとりでいるということなのよ。
あなたのお父さんは窮屈なこの家にいるのが嫌で、学校を卒業をしていくらも経たないうちに、出て行ってしまいました。
いつか帰って来るだろうと思いずっと待っていましたが、とうとうあの子は今日という日になるまで帰らずじまい。
でもあの子がこの家を嫌がるわけは、私には何となくわかるんです。
先代から私の夫に遺産が相続される時に、身内でちょっとした争いがありましたから。
あの子はそんな柵から解き放たれて自由になりたかったんでしょうね。
忍、あなたは私の家を重荷に感じるかしら。私は、あなたさえ良ければ、私の持っているものをあなたに使って欲しいのだけれど。
会ってお話がしてみたいわ。
私にあなたの歌声を聴かせてください。